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海洋学者ケン・ベッセラーが話した海の放射能汚染の現状


世界的な科学者のケン・ベッセラー博士は2013年に福島第一原子力発電所の調査を行い、その凄惨な状況について語りました。他に類を見ないほどの大規模な原発事故に対して博士はどんなことを考えたのでしょうか。
今回はケン・ベッセラー博士が話した海の放射能汚染について紹介します。

ケン・ベッセラー博士の経歴

まずは、ケン・ベッセラー博士の経歴について紹介します。博士は研究者としてのキャリアの大半を、海洋中における放射性物質の研究に費やしてきた世界的科学者で、チェルノブイリ原発事故のときも黒海の放射性物質の影響を調査・研究していました。事故直後の2011年4月には、他の日本人研究者と連名で「福島原発から出た放射性物質の海洋環境への影響」という題名の論文をつくりあげ、誰もが知っている世界的に有名な科学雑誌『ネイチャー』への掲載も決定していましたが、原発事故以降あまり良いニュースが国内外になく、今まで以上に日本への風評を煽りかねない内容として削除を求められました。
政府や国が隠しておきたい事実も明るみに出そうとする姿勢はなんとも博士らしく、反骨の科学者として高く評価されています。

ウッズホール海洋研究所

ケン・ベッセラー博士が所属する世界最大の独立系研究所である「ウッズホール研究所」はアメリカ、マサチューセッツ州ウッズホールにある複合的な海洋研究施設です。アメリカ海軍と米国科学財団が主に出資していて、タイタニック号の沈没船体の捜索を成功させたことでも有名です。最近ではAUV(自立型無人潜水艦)の「REMUS」を開発し、現在はアメリカ海軍や海上自衛隊などが機雷処分用の掃海具として利用しています。

福島第一原発事故後の調査

では、ケン・ベッセラー博士はどのような調査・実験を行ったのでしょうか。博士は海水と海底にある沈積物を対象に、海洋汚染の度合いの調査を行いました。海水調査は異なる海域での海水のサンプル採取を100箇所行いました。ひとつのサンプルにつき20ℓなので、合計2tもの海水を採取したと言えます。20ℓほどあれば、セシウムのアイソトープ(原子)を確認するのに十分な量になるそうです。そして、沈積物の調査にはあちこちにチューブを差し込むことで海底の沈積物を採取し、それを調査しました。
結果を見て博士は「海洋汚染自体は、人体へのリスクという観点から言えば、水泳しても大丈夫でしょう。しかし、魚介類の汚染は、魚にガイガーカウンターを当てるだけで検知できるほど高いレベルです。これは、食べても安全とはとても言えないと考えています」と述べ、海洋汚染の状況が深刻なレベルに達していることを訴えました。

海洋汚染の危険性

前述の通り海洋汚染はかなり深刻化していて、人体にも大きな影響を与えかねません。さらに博士は「ストロンチウム」の危険性についても言及しています。「セシウムよりもストロンチウムが心配です。ストロンチウムは骨の中に入り、長期間にわたって残りつづけます。2011年に比べて海洋のセシウムは減っていますが、ストロンチウムの量は50倍になっています」
このストロンチウムの増加には、福島第一原子力発電所のタンクから汚染水が漏れでてしまったことが大きく関係しています。海に漏れでた放射性物質は瞬く間に広がり、一時期はカナダなどのほとんどの海洋で確認されることがあるほどになっていました。博士は、日本は柔軟になって国内だけでなく専門家による国際的なチームによる調査が重要だと述べました。

おわりに

今回はケン・ベッセラー博士の海洋汚染の調査結果について紹介しました。セシウムやストロンチウムは市場に出回っている商品に関しては問題ないとされていますが、厚生労働省の設けた基準だけの判断であるため、危機意識を忘れないことが重要です。より多くの国からの意見やデータを取り入れた基準の設定が待たれます。

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放射能と汚染問題

放射能と汚染問題

福島第一原発事故は私たち日本人にとって放射能の脅威を知るきっかけになったかもしれませんが、過去にはチェルノブイリ、スリーマイルといった場所でも原発事故が起こっています。このサイトでは世界のエネルギー問題と放射能との関係性についてまとめたものをご紹介しています。