pixta_12754584_S

なぜ日本の原発は海沿いに作っているの?


福島第一原子力発電所をはじめとし、日本の原子力発電所は海沿いに建設されています。津波の危険性があるにも関わらず、なぜ海沿いにできているのでしょうか。今回は日本の原発が海沿いにある理由を紹介します。

海沿いにある理由

日本の原子力発電所は全て海沿いに建設されています。これには原子力発電所を運営していくために重要な、「原子力発電所の原子炉を海水で冷却する必要があるため」という理由があります。正確には原子炉自体は真水で冷却し、その冷却水を冷やすことを目的とした海水ポンプが必要なため海沿いに建設しているということです。
対して、海外の大型の原子力発電所の場合は巨大な冷却塔を導入しています。冷却塔は川の水を汲み上げて冷却した後、そのまま戻してしまうと様々な問題が発生するので一度温かくなった川の水を空気で冷やす「空冷」をしてから河川に戻しています。日本の原子力発電所の場合は前述の通りの海水を利用した完全な水冷方式のため、冷却塔は設置されず、原子炉を冷却するには冷却水の熱を取り除く海水ポンプが重要になります。ここに海への依存度が高い日本の原子力発電所の問題点があると言えるでしょう。

問題点

海沿いに原子力発電所を建設するのは日本の原子力発電所のシステム上、必要不可欠なことではありますが、そこには大きな問題があります。それは「海水ポンプが利用できなくなると原子炉の冷却が困難になる」ということです。
原発事故が起こる前には大きな事故がなかったため、大きな問題として取り上げられませんでしたが、福島第一原子力発電所事故の際にこの問題が大きく明るみにでてしまいました。地震発生直後、福島第一原子力発電所は外部電源を失いましたが非常用ディーゼル発電機が稼働したので、一時は問題ないと思われました。しかし、その約50分後には地震に起因する津波が押し寄せたことで非常用ディーゼル発電機は故障し、電気設備、ポンプ、燃料タンク、非常用バッテリーなどの大多数の設備が機能しなくなってしまいました。
福島第一原子力発電所は「全交流電源喪失状態(ステーション・ブラックアウト)」に陥り、ポンプをはじめとする設備が稼働できず、原子炉内部や燃料プールへの送水及び冷却が困難になりました。
最終的には原子炉内部の核燃料の温度が上がり過ぎ、「炉心融解(メルトダウン)」を起こしてしまい容器が破損、放射性物質が周囲にばらまかれることにもつながりました。
原子炉内部の核燃料は停止した後も膨大な崩壊熱を放出しつづけているため、注水をして冷却をすることが重要でしたが、事故の際にはそういった対応ができなくなっていたために大規模な災害の原因になりました。事故によって諸外国の原子力発電所と比較すると冷却面の弱さが判明し、冷却塔を利用した空冷が配備されていれば被害はここまで大きくならなかった可能性もあると言われています。

課題

日本の原子力発電所の課題は大きく分けて2点あります。ひとつは海に依存度の高い冷却の構造の改善です。同じ構造のまま稼働を続けてもう一度地震や津波に原子力発電所が襲われた際に対応できないようでは、福島第一原子力発電所事故の二の舞いになってしまいます。海沿いに建設し、冷却の方法が海を利用した効率の良い水冷式になってはいるものの、今後は緊急時の対応も考えた変更が求められています。
もうひとつの課題は、環境面への影響です。海を利用した水冷式は原子炉を直接冷却しているわけでなく、冷却に使った冷却水を海水で冷やすことで、海水を温めているともいえます。
原子力発電は、環境に優しいクリーンなエネルギーといわれていますが、実際は環境にも負担をかけているのではないでしょうか。また、事故が起きた際に検出される放射性物質も環境への悪影響が懸念されます。
これらの2つの課題を克服することが原子力発電所の大きな目標といえるのではないでしょうか。

おわりに

今回は日本の原発が海沿いに建設されている理由を説明しました。
原子力発電所が大きく海による水冷式に依存した冷却方法を採用しているのは、周囲を海に囲まれた島国らしい選択でもあるといえますが、一方でその豊富な水資源に悪影響を与える可能性のあることも忘れてはいけません。

The following two tabs change content below.
放射能と汚染問題

放射能と汚染問題

福島第一原発事故は私たち日本人にとって放射能の脅威を知るきっかけになったかもしれませんが、過去にはチェルノブイリ、スリーマイルといった場所でも原発事故が起こっています。このサイトでは世界のエネルギー問題と放射能との関係性についてまとめたものをご紹介しています。